【vol.27 久が原】田園調布や山王と並ぶ、城南エリア屈指の邸宅街
皆さまこんにちは。東京の街を愛する宅地建物取引士、伊勢谷(いせたに)です。こちらの連載では東京の様々な街を “暮らす目線” と “不動産屋目線” でご紹介していきます。
今回訪れたのは大田区「久が原」。住宅地がメインのため、降り立ったことがない方も多いのではないでしょうか。今回は “久が原アドレス” を中心に「御嶽山」「久が原」「千鳥町」3つの駅間をじっくりと歩き、その魅力を探ってきました。
武蔵野台地の突端に位置し 旧石器時代からの歴史がある街
「千鳥町」「久が原」「御嶽山」はいずれも五反田〜池上を結ぶ東急池上線の駅。“久が原アドレス” は線路東側の高台に広がっています。西へ進むと環八、東急多摩川線、多摩川を境に神奈川県という並び。一方東側は第二京浜と接しています。幹線道路に挟まれつつ、一帯は非常に閑静な邸宅街。碁盤の目状に整備された街路が特徴です。
▲ 赤い点線で囲った部分が “久が原アドレス”。西側は東嶺町、南久が原、千鳥アドレスと接しています。
“久が原アドレス” の一帯は「久が原台」と呼ばれ、これは強固な地盤で知られる武蔵野台地の一部にあたります。同エリア内からは旧石器時代の調理場跡や土器、弥生時代の竪穴式住居などが発見され、これらは「久ヶ原遺跡」として知られています。集落の規模はなんと関東地方最大だったそう。
▲ 左・第二京浜からしばらく内側へ歩くと緩やかな上り坂に当たります。ここから先の高台が碁盤の目状に整えられた邸宅街。/右・「久が原南台児童公園」内にあった久ヶ原遺跡の案内板。同園内からは三軒の竪穴式住居跡が発見されています。
“新田園調布” とも称された宅地開発
元々このあたりは農村地帯でしたが、関東大震災発生による郊外の住宅需要拡大によって宅地化が進んでいきました。田園調布の開発に次いだことから “新田園調布” と称されることもあったそう。
▲田園調布は駅から放射状に街路が伸びているのに対し、“久が原エリア” は縦横に直線道路が走っているのが特徴。
一方開発の工程を比較すると、田園調布は渋沢栄一氏が発起人となった「田園都市株式会社」が手掛けたものだったのに対し、久が原は当時の地権者で組織した耕地整理組合によるもの。各区画は個別性に富み、計画的に造成された景観とは違う形で発展を遂げていったそうですが、それでも碁盤の目状に広がる邸宅街は圧巻そのもの。以前取材した『城南五山』と通ずるものを感じました。
▲ 慣れないうちはマップを確認しながら進まないと迷子になってしまいそう。
用途地域図と重ねて見ると、“久が原アドレス” のほとんどが「第一種低層住居専用地域」に指定されています。道幅が広々している一方交通量は非常に少なく、周辺は “しん” と静か。空が広く、歩いていてとても気持ちが良かったです。
子育て環境や治安が良好
大田区は東京23区内で最も公園・緑地数が多く、緑豊かな街並みが特徴。エリア内には児童公園が点在していました。学校や区役所出張所、図書館なども揃っており、ご家族で暮らしやすそうな印象です。
▲ 左上・高低差を利用した「千鳥いこい公園」。元気に遊ぶ園児たちの姿がありました。/右上・大田区久が原特別出張所が併設された「久原小学校」。/左下・第二京浜沿いのマンション群を背負う「久が原幼稚園」。/右下・「久が原図書館」
▲ 左・“久が原エリア” には東部と西部、2つの八幡神社があり、こちらは「久が原東部八幡神社」。/右・のどかな呑川は “仲池上アドレス” との間に流れています。
また注目したのが邸宅街の各所で見られた『皆様の安全を見守ります』の文字。第二京浜沿いに「池上警察署」があるため、防犯カメラやパトロール体制が強化されているようです。子育ての面で非常に心強いですね。
▲ 左・豪邸が多いだけに、監視の目がしっかりと向けられている模様。/右・「池上警察署」
買い物環境は? 3つの駅の商店街を比較
ここからは歩いた順番に、3つの駅前商店街を比較してみようと思います。共通しているのはどの駅にもスーパーやドラッグストアなどが用意されていること、そしてどこか懐かしさを感じることです。駅前以外にバス通りである「東久が原商栄会」もご紹介しますね。
◆ 千鳥町
線路の両側に「千鳥町商栄会」が続き、店舗数など3つの駅の中では最も小ぢんまりとした印象を受けました。
▲ 上・駅前から中華料理、接骨院、居酒屋などローカルなお店が並んでいます。/左下・東側にあるスーパー「サミット 大田千鳥店」。/右下・味わいのあるお蕎麦屋さん「更科 広栄」。
◆ 久が原
駅前から雰囲気の異なる商店街が3つ続き、たくさんの個人店が集まっているのが魅力です。こちらも駅前に「サミット 久が原店食品館」がありました。商店街ごとに毎年夏祭りやハロウィンイベントが開催されるなど、温かなコミュニティが形成されているようです。
▲ 上・人の数も「千鳥町」駅前に比べ多め。/左下・東側の「ライラック通り久が原」。住宅街から駅方面を撮影。/右下・西側の「久が原駅前通り 末広商店会」。
「ライラック通り久が原(久が原銀座商店街)」は個性豊かな個人店が多い印象。ライラックという呼び名は平成5年のリフレッシュ時に公募されたもので、『ライラックの香る優雅な街を目指し』付けられたそう。“久が原アドレス” 側に広がっていることもあり、なんだか洗練された印象を受けました。
▲左・街灯にはひらひら舞う蝶のデザイン。/中央上・昭和31年創業の「Mother’s Meat Plaza」。お弁当やギフト商品も扱っています。/中央下・昭和34年創業の老舗洋菓子店「Flammarion(フラマリオン)」。/右上・昔ながらの店構えが目を惹く「小町鮨」。/右下・力強い書が掲げられた「アトリエ翔子喫茶」は地元のマダムで賑わっていました。
環八まで続く「久が原駅前通り 末広商店会」は八百屋さんや惣菜店、酒屋さんに混じってドラッグストアや「サミット衣類館 コルモピア 久が原店」、地元の電気屋さんなど、より生活に根付いたお店が並んでいる印象です。
▲ 左・街灯は笠が4つ連なるようなデザイン。/右上・お客さまがひっきりなしだった「大安青果」。/右中央・懐かしい雰囲気のお惣菜店に文具店。/右下・店構えがオシャレな「秋庭商店」。ワインの品揃えに定評があるそう。
こちらも駅の西側、線路と並走しているのが「久が原栄会」。上記ふたつに比べ人通りこそ少ないものの、こちらも生活に密着したお店が多い印象でした。
▲ 左・街灯はグリーン基調で蔓が伸びるようなデザイン。/右上・カフェや薬局、進学塾などが並んでいます。/右下・コンクリート打ち放しの外観が印象的な「井上書店」。
◆ 御嶽山
こちらにも「御嶽商店街」があり、チェーン店などは3つの駅の中で最も多い印象。大きなスーパー「イオンスタイル 御嶽山駅前」や「オオゼキ 御嶽山店」もあり、非常に暮らしやすそうな印象です。
▲ 上・三角屋根が可愛い駅舎。/左下・街のシンボル「御嶽神社」。/右下・商店街は午前7時から9時、午後3時から6時の2回車両通行止めとなり、安心して買い物ができそうです。
▲ 左・「イオンスタイル 御嶽山駅前」/右・「オオゼキ 御嶽山店」
◆ 久が原商栄会
“久が原アドレス” の中でも西側に住んでいると、駅がやや遠くなり買い物に不便なのでは? と思いきや、呑川と並走するように通称 “久が原バス通り” があり、文字通り「蒲田」や「田園調布」、「大森」や「洗足池」を結ぶバス便が充実しています。通り沿いに「東急ストア 久が原店」(同建物内に洋品店「しまむら」もあり)、呑川を渡った先にスーパー「オーケー 仲池上店」があって便利です。
▲ 左・バスの往来は非常に頻繁。この通り周辺でお買い物は完結します。/右上・「東急ストア 久が原店」の側面では野菜市も開催されており、地元のお客さまで賑わっていました。/右下・駐車場も併設した大型の「オーケー」。
“碁盤の目” は土地や戸建てが中心 マンションは東側に集中
“久が原アドレス” の過去3年間不動産成約情報について確認すると、ピタリと用途地域と重なるような結果になりました。
▲ 東日本流通機構(REINS)に登録された、過去3年間(2023/2/1-2026/1/31)の成約事例を集計したもの(オーナーチェンジ物件を除く / 土地・建物・専有面積45㎡以上、価格の制限なし)。
久が原1,3,4,6丁目は「第一種低層住居専用地域」に指定されているエリアが広く、土地や中古戸建ての取引が中心。一方久が原2,5丁目は「第一種住居地域」や「準工業地域」に指定されているエリアが広いため、マンションの取引が目立ちます。
土地の平均平米数は約118㎡、中古戸建ての平均平米数は約111㎡。これは「第一種低層住居専用地域」の建ぺい率が50%、容積率が100%に指定されていることが影響しています。また全体的に坪単価は300万円を下回っているのが特徴です。
まとめ
取材と調査を元にまとめた “久が原アドレス” の特徴は以下の3つ。
・凛とした邸宅街
・駅前商店街はどこか懐かしい雰囲気
・中古マンションは駅距離が離れる可能性大
碁盤の目状に広がる邸宅街は凛とした佇まいですが、ピリピリと張り詰めた空気や排他的な空気が流れているわけではありません。それはきっと道幅がゆったりしていること、駅前から穏やかな商店街を歩いてアクセスすること、また多摩川や呑川といった河川に囲まれ、緑豊かな街並みが形成されているからではないでしょうか。
駅周辺からすぐに第一種低層住居専用地域に指定されているエリアが多いため、“久が原アドレス” でマンションを探す場合は徒歩10分ほど離れた第二京浜沿いや呑川周辺になることが多そうです。また今回対象から外した池上線の西側(環八沿いなど)も探されると見つけやすいかもしれません。
おまけ 〜わたしの取材メシ〜
友人宅への手土産を求めて、呑川沿いにひっそり佇むフランス洋菓子店「Maison de petit four(メゾン・ド・プティ・フール)本店」を訪問。定番と季節限定のクッキー缶を購入し、ついでに昼食のパンもゲットしました(公園のベンチで完食)。帰り道「COCOFURO ますの湯」さんで温泉を楽しんだのでした(最近取材帰り、銭湯に立ち寄るのが定番に……)。
▲ 左上・「Maison de petit four(メゾン・ド・プティ・フール)本店」。店内はパリの洋菓子店さながらの洗練された内装。焼き菓子のほかケーキやペーストリーも販売しています。/右上・黄色が季節限定、白が定番。洋菓子が描かれた缶も可愛いです。/下・早朝6時から深夜24時まで営業している「COCOFURO ますの湯」。2019年にリニューアルしたデザイナーズ型銭湯で、黒湯温泉の掛け流しや高濃度炭酸泉、無料のサウナが楽しめます。いいお湯でした!!