東京ライフスタイル探訪
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【vol.28 千代田区 番町】マンション建替が加速する、皇居西側の邸宅街

皆さまこんにちは。東京の街を愛する宅地建物取引士、伊勢谷(いせたに)です。こちらの連載では東京の様々な街を “暮らす目線” と “不動産屋目線” でご紹介していきます。

今回訪れたのは「千代田区 番町」。皇居の西側に位置し、日本屈指の邸宅街として知られています。いつもは駅ごとに取材・執筆していますが、今回はこのアドレス内を詳細にレポート。春めく千鳥ヶ淵周辺もご紹介します。

日本を代表する施設に囲まれた アクセス良好な邸宅街

“番町アドレス” に接する駅は全部で4つ。東京メトロ半蔵門線の「半蔵門」、東京メトロ有楽町線の「麹町」、そしてJR中央総武線や地下鉄線が複数乗り入れる「四ツ谷」・「市ヶ谷」駅です。アドレスの外側は靖国通り・新宿通り・内堀通りに囲まれ、皇居や赤坂離宮、靖国神社、防衛省など国や官公庁の施設が周辺に点在しています。
 

▲ 赤い点線で囲ったエリアが千代田区の中枢 “番町アドレス”。他の邸宅街と同様に、街路は碁盤の目状に整備されています。

皇居に最も近い邸宅街

街の歴史を紐解くと、江戸時代、現皇居にあった江戸城の防衛の要所として西側に “大番組” が配置され、それが地名や町名の由来となりました。明治期から戦前までは官僚や政治家の邸宅街となり、外国公館の立地や文化人の居住などにより文化性の高い地域性を確立。戦後はマンションやオフィス用地へと変遷していきました。

▲ 桜の時期に合わせて一般公開される「皇居乾通り」。2026年は延べ23万人の来場があったそう。

そんな皇居の周辺は日頃からジョギングコースとして愛され、春は桜の名所としても知られています。毎年桜の時期に合わせて皇居が一般開放され、ライトアップを含む「千代田のさくらまつり」を開催。全国から見物客が訪れるだけでなく、外国人観光客の方々も多く足を運んでいました。
 

▲ 上・千鳥ヶ淵のボート乗り場。/左下・千鳥ヶ淵緑道。/右下・平日にも関わらず、緑道沿いは見物客で大賑わい。
 

▲ 一角には露天が並び、中には「二番町町会」のブースも。二番町に「駐日ベルギー大使館」があることから、ベルギーワッフルを販売していました。
 

住居地域と文教地区

千代田区は約70%が公共用地・商業用地に指定されており、住宅用地はわずか20%ほど(2018年現在)。“番町アドレス” の住宅用地割合は区内でトップとなっています。また広い区域が文教地区に指定されているため、アドレス内や周辺には学校が多数。大使館が多いこともあり厳重な警備体制が敷かれており、子どもからお年寄りまで暮らしやすく、治安のいい街並みとなっています。

▲ 「駐日英国大使館」。敷地のうち利活用の程度が低かった約0.9haの敷地を不動産デベロッパーに売却し、そこから見つかった40基の遺構(竪穴建築)の調査が行われたのち、2025年からマンション用地として建設が始まっています。

大使館や校舎はクラシカルなデザインのものが多く、それが街並みの顔を形成しています。日中は散歩に出る園児、夕方には下校する学生の姿を多く見かけました。
 

▲ 左上・「雙葉小中高等学校」/右上・近代化産業遺産に指定されている「九段小学校・九段幼稚園」。横にある「東郷元帥記念公園」は2017年から改修工事に入っていましたが、2026年3月末にようやく完成。先日オープニングイベントが開催されました。/左下・「女子学院中高等学校」/右下・エリア内には保育園も多数。こちらは「麹町小学校・麹町幼稚園」の横を歩く園児たち。

坂が多く、風情ある街並み

邸宅街は高台に位置し、アドレス内を横切る “番町中央通り” や “番町文人通り”  “番町学園通り” などは基本的に平坦ですが、そこから内堀・外堀へと坂道が伸びています。生垣や石垣が立派な敷地が多く、緑豊かな街並み。ゆかりある文人の案内プレートをあちこちで見かけ、歴史散策を楽しめます。

▲左上・日露戦争で活躍した海軍元帥・東郷平八郎の旧宅が近くにあったことに由来する東郷通り。この坂道は “行人坂” と呼ばれています。/右上・番町中央通りは半蔵門駅通り(または大妻通り、通称 “袖摺坂” )と交差し、その先は “五味坂(写真左下)” と呼ばれています。付近には「滝廉太郎居住地跡の碑」が。/右下・その地に縁ある文人の案内プレート。こちらは「与謝野鉄幹・晶子旧居跡」。

▲ 六番町で見つけた「六番町奇数番地街づくり憲章」。住んでいる方々の誇りとプライドを感じます。
 

ヴィンテージマンションの 建て替えが進行中

日本のマンション黎明期である1960年代から順次広大な屋敷跡がマンション用地となったため、いわゆる “ヴィンテージマンション” が数多く建ち並んでいるのが街の特徴です。それらは長い年月を経てもなおきちんと維持管理されており、いま見ても威厳や貫禄が漂うものばかり。特に場所柄、興和不動産が外国からの要人向けに分譲を開始したホーマットシリーズが数多く集まっているのも有名で、番町文人通りは通称 “ホーマット通り” とも呼ばれています。

▲ 左上・千鳥ヶ淵交差点に建つ「一番町パークマンション(左・1973年竣工)」と「パークサイドハウス(右・1981年竣工)」。東向きの窓から皇居とお堀を見渡せる、特等席に建つ2棟です。/右上・雁行した外観が特徴の「コープ野村一番町(1972年竣工)」。/左下・半蔵門駅の出口目の前にある「ルミナス一番町(1979年竣工)」。/右下・鉄平石の石垣と日本らしい植栽、灯篭などがアイコンのホーマットシリーズ。こちらは「ホーマットカメリア(1978年竣工)」。向かいには2003年築の「ホーマット三番町」があります。

しかし一方で、近年はそうしたヴィンテージマンションが次々建て替えられているのもこのエリアの特徴。例えばホーマットアンバーは「パークコート一番町」に、ホーマットカヤは「One Avenue一番町文人通り」に、ライオンズマンション一番町第二は「パークコート千代田一番町」にと、時には『マンション建替え円滑化法によるマンション建替・敷地売却事業』の認可を受けながら進んでいます。

取材中通りがかった下の「麹町三番町マンション」も “立派なヴィンテージマンションだな〜” と眺めていると、なんと外柵に建て替えの掲示を発見。2034年には地下2階付き地上17階建てのマンションに生まれ変わるようです。
 

▲ 「麹町三番町マンション」。建て替えが決まってもなお植栽はきちんと剪定され、建物も美しく管理されています。上の写真で奥に見えているのは「ブリリア一番町」。

▲ 麹町山王マンションは「ブリリア二番町」へ。2026年8月竣工予定で、現地でもおおよそ工事が終わっている印象でした。

ヴィンテージマンション好きとしては風情ある建物が取り壊されてしまうのは悲しい限りですが、建て変わった後のマンションや新築マンションたちも “さすが番町” “きっと将来のヴィンテージ候補” と言いたくなるほど立派なものばかり。ここはひとつ『ヴィンテージマンションが世代交代している』と思うことにしました。
 

お買い物はちょっと不便?

邸宅街+学校+オフィスビルが集まるエリアなため、スーパーや日用品を調達できそうなお店はほとんど見かけません。歩いている中では四ツ谷駅前に2020年誕生した複合ビル「COMORE yotsuya」内のスーパー「ライフ コモレ四谷店」、靖国通り沿いの高級スーパー「リンコス 九段店」、番町アドレスの北側を走る “二七通り” 沿いのミニスーパーや個人商店など。そのほか駅前通りに小規模な「成城石井」や「マルエツプチ」、「まいばすけっと」などがあるようです。お料理好きな方にとっては少し物足りないかもしれません。

▲ 左上・四ツ谷駅前の再開発によって誕生した高層ビル「COMORE yotsuya」。/右上・「リンコス 九段店」。/左下・ “二七通り” 沿いにあった「内野牛肉店」。お弁当やお惣菜も販売しており、店頭にはひっきりなしにお客さまが。/右下・同じ通り沿いにあった「杉本とうふ店」。昔懐かしい店構えにほっとします。なお、近隣には八百屋さんや生花店もありました。
 

マンション成約に集中 今後の動向にも注目

過去3年間の不動産成約情報を集計してみると、驚くことに土地や中古戸建ての成約は『ゼロ』。すべてが中古マンションという結果になりました。

▲ 東日本流通機構(REINS)に登録された、過去3年間(2023/3/1-2026/2/28)の成約事例を集計したもの(オーナーチェンジ物件を除く / 土地・建物・専有面積45㎡以上、価格の制限なし)。

中でも成約数は皇居に最も近い一番町と三番町に集中しています。用途地域図を確認すると、一番町と三番町を縦に走る半蔵門駅通り(または大妻通り)から西側全域が “文教地区” に指定されており、学校や大使館が多いことが理由かもしれません。
 

予想していた通り、その価格や坪単価の高さは都内トップレベル。各マンションの築年数を確認すると、1980-90年代に竣工したマンションはほぼ無く、1970年代と2000年代以降に分かれているのが印象的でした。前述の通り建て替えが次々行われているので、今後新築マンションの販売情報などにも注目していきたいエリアです。
 

まとめ

取材と調査を元にまとめた “番町アドレス” の特徴は以下の3つ。

・治安のいい文教地区
・マンション居住がスタンダード
・背筋が伸びる空気感

成約情報の平均平米数を確認しても、専有面積の広いマンションが中心です。歩いている中で何人も警備員の方とすれ違ったため、特にお子様がいらっしゃるファミリーにとって安心して暮らせる環境ではないかと思いました。保育園や児童館も多く、中にはインターナショナルスクールも見かけましたよ。

最も印象的だったのは、アドレス内を流れる凛とした空気。緑が豊かな通り沿いは立派なマンションが多く、そこに学校施設や大使館、お屋敷が入り混じっています。車通りも少なく、とても快適に歩くことができました。超高額エリアだけあって、まさに “選ばれし者のための街” と言えますが、その空気を感じるために散策するだけでも価値がある気がします。
 

おまけ 〜わたしの取材メシ〜

取材の最後に辿り着いたのは四ツ谷駅。以前からどうしても行ってみたかったジャズ喫茶「いーぐる」に念願の初訪問。螺旋階段で地下に着くと、広い空間のあちこちに客席が置かれ、大音量のスピーカーからジャズの音色が響きます。気がつけば持参した日記帳を5ページも書いていてびっくり。良い音に没入し、頭を空っぽにしたり、自分と向き合う時間が取れる、とても素敵な空間でした。また必ず伺います!

▲ 左上・四ツ谷駅から徒歩2分、新宿通り沿いにあるジャズ喫茶「いーぐる」。トランペットのマークが目印。/右上・地下へ下りる螺旋階段の壁面にはポスターがびっしり。/下・自家製チーズケーキのセットを注文。開店から18時まではじっくりジャズと向き合うため、基本的に会話禁止。18時以降はお酒を楽しみながら語り合えるジャズバーに変身します。

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